今回は、リチャードソンジリスの飼育方法と体調管理についてご説明していきたいと思います。世間でリチャードソンジリスのことをまだご存じないという方も多いと思います。それだけに既にパートナーとして迎え入れた方でも飼育のことや体調の変化について不安を抱いている方も少なくないようです。正しい知識を身につけて頂くことで、パートナーが元気に生活できるような環境づくりに役立てて頂きたいと思います。また、これからリチャードソンジリスを迎え入れようと検討している方にも参考になればと思います。
1.リチャードソンジリスのベストの飼育環境は?
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リチャードソンジリスの生態を理解しましょう
リチャードソンジリスは巣穴の中で生活している時間が長いというイメージが強い人も少なくありません。しかし、実際には昼行性の動物なので、日中は巣穴の中より外に出て活動している時間のほうが長いです。また、野性下では短草が多い平原に生息しており、日光が十分に当たる環境を好みます。そのため、飼育する際にも日中の日当たりが良く、明るい場所にケージを置いてあげるのが良いでしょう。ドアの付近は開閉時にリチャードソンジリスが音に驚いてストレスの原因になりやすいので、可能であればドアから少し離れた場所に設置するのが望ましいです。
室温は常に20~25度に保ちます。20度以下の環境では、リチャードソンジリスが冬眠してしまうので注意が必要です。野生下では6月頃から翌年の3、4月頃までの間、冬眠をします。ただ、飼育下のリチャードソンジリスは健康面を考えると冬眠をさせないほうが安心です。「眠るだけならば体力も使わないので大丈夫では?」と思われがちですが、野性のリチャードソンジリスと比べて飼育下で育った個体は免疫力が低下しています。
野生の個体でも冬眠中にそのまま死亡する例があるため、飼育下の個体はそのリスクがさらに高まり、命に関わる危険がないとはいえません。気温が20度以下になる日が多い時期は、専用ヒーターを使用してケージ内の温度調整をします。もし、冬眠してしまった場合には無理やり起こすのではなく、室温を上げることで自然と目覚める環境を作りましょう。室内のエアコンを使用し、ケージが設置してある部屋自体の温度を調整するのもおすすめです。
リチャードソンジリスを飼育するならアクリルケージ!?
飼育するケージについてはこれまで定番だった金網ケージの短所を改善し、居住性や安全性を考慮して開発したアクリル製ケージがお勧めです。金網ケージはコスパが良く、通気性の良さがメリットでした。ただ、リチャードソンジリスが金網をかじり、歯が不正咬合になる、歯欠けするといった事故も起こりやすいです。網目から鼻先を突き出したときに表皮が剥けてしまうこともあるため、リチャードソンジリスの健康を考えると万全な環境とはいえないかもしれません。
そこで、金網ケージで起こり得るリスクを参考に開発したのがオリジナルのアクリル製ケージです。アクリル製にしたことで、網ケージで頻発していたケージ外への牧草飛び散りや糞尿臭・体臭漏れの軽減が期待できます。保温性も高くなるので冬眠防止にもなり、透明度が高いので全方向からリチャードソンジリスを観察することも可能です。こちらのケージでは外付けヒーターがセットになっているので、寒い冬場にもケージ内温度の調整がしやすくなります。ケージ前面の開口部は大きめに設計し、内部に手を差し入れる際にも縁にぶつかりづらくなっているのも特徴です。メンテナンス性の良さにもこだわり、便利な糞切りや掃除がしやすい引き出しを採用しています。
ケージは落し蓋形式になっているので齧られ防止も可能です。すべての出入り口にはロックも付けているため、リチャードソンジリスが脱出してしまうリスクも減らすことができます。さらに、設置場所によって調整しやすいように、ヒーターや給水ボトル、ホイールを左右どちらにも移動して設置できるようになっているので便利です。せっかくお迎えするリチャードソンジリスなので、可能な限り快適な環境で飼育しましょう。
2.リチャードソンジリスの体調管理で気をつけるポイント
「歯は命」はリチャードソンジリスも同じです!
ゲッ歯類であるリチャードソンジリスの前歯4本は「切歯」といい、放っておけば生涯伸び続けるものです。ただ、食べ物を噛む際や歯同士が触れたときの摩擦によって自然に削れ、適切な長さを保つことができるようになっています。ところが、金網ケージを齧ったり、歯が何らかの原因で欠けたりすると、切歯同士の摩擦ができなくなる「不正咬合」という状態になるリチャードソンジリスも少なくありません。こうなってしまうと歯が伸びすぎて斜めになり、口からはみ出してしまいます。歯に異常が起こったリチャードソンジリスは食事が満足に摂れなくなり、健康にも関わってくるので避けなければなりません。できるだけこまめに歯のチェックも行いましょう。
便の状態も確認していきましょう!
リチャードソンジリスの体調面を把握するためには、毎日の便チェックも必要です。体内にさまざまな細菌や原虫などがいますが、これは人間と同じで、健康な状態であれば問題になることもありません。しかし、ストレスフルな状態になったり、食事内容が合わなかったりすると腸内環境の乱れによる下痢を招きます。
特に、フードを突然別の種類のものに変えてしまうことも下痢の原因になりやすいです。新しいフードに切り替える場合は普段与えているものに新しいフードを少量混ぜることからスタートします。徐々に新しいフードの量を増やしていけば、体に合っているかどうかもチェックしやすいです。子どものリチャードソンジリスは大人より免疫力が高くないため、命に関わる危険性もあるので注意が必要です。
逆に、便秘で盲腸便秘や食滞、腸閉塞などになる可能性があり、こちらも重症化すると命に関わるので早めの対処をしなければなりません。便秘が続くと胃まで食べ物が詰まるケースもあり、食欲低下につながります。さらに重症化すると詰まった食べ物からガスが発生して腸内に溜まり、容体が急変して命を落とす場合があるので要注意です。場合によっては入院治療が必要になるケースもあります。便秘になったときは便の数が明らかに減り、排便できない分体重が急激に増加するのがひとつの目安です。
下痢になったときは特にそうですが、ケージ内が不衛生な環境になることも避けましょう。不衛生な環境は、リチャードソンジリスが呼吸器疾患や皮膚疾患を起こす原因になります。呼吸器疾患から心臓肥大などほかの症状につながってしまうケースもあるので、常に清潔な状態に保つことが望ましいです。不衛生な環境のなかでは症状の改善も難しく、時間がかかってしまう場合もあります。
活発で元気だからこそ外傷のチェックを!
また、好奇心旺盛なリチャードソンジリスは活発に行動する動物です。あちこち元気に動き回っているうちに、ケガをすることがないとはいえません。飼い主がケガに気づかないまま放置すると化膿したり、リチャードソンジリス自身が傷口を自咬したりと悪化する可能性があります。個体の性格差もありますが、リチャードソンジリスの自咬症率は高く、病院で治療を受けた後、完治するまでの間に自分で噛んでしまうことも珍しくありません。そのため、ケガをしていないか日々体の細かな部分までチェックしておくほうが安心です。心配しすぎる必要はないですが、日常のコミュニケーションをとる際やケージのメンテナンスを行うときなどに確認をしましょう。
3.リチャードソンジリスに懐いてもらうためには?
ペットとして飼育されているリチャードソンジリスは、人懐っこいことで知られています。信頼関係が築かれると、抱っこしているときに赤ちゃんのように眠ったり、警戒心を解いたリラックスした姿を見せてくれたりするほどです。ただ、リチャードソンジリスの性格差もあるため、懐き方や懐くまでの期間は一概にはいえません。この点について念頭に置き、根気よく懐かせましょう。
まずは場所に慣れることから始めましょう!
自宅にお迎えしたばかりのリチャードソンジリスは慣れない場所に急に来たことに警戒し、何もかもに敏感になっている状態です。そのため、まずは新しい環境に慣れてもらうことからはじめましょう。お迎えする前にケージをセットし、すぐにくつろぐことができる状況を作っておきます。様子を見る期間の目安は、1週間前後です。実際に環境に慣れたかどうかは、リチャードソンジリスの様子を見ながら判断しなければなりません。眠っているときの姿は特に見分けやすく、環境に慣れてくるとリラックスした体勢で眠ることもあります。
この期間はゲージ内のメンテナンス時、よほど汚れていなければ寝床はそのままにしておきます。不衛生な環境は健康に悪影響とはいえ、この時期のリチャードソンジリスにとっては自分の匂いがついたものが安心できる場所だからです。
環境に慣れた頃を見計らい、次にするのはいよいよ人の手に慣れてもらうことです。ただ、こちらも個体の性格差によるため、根気よく繰り返して信頼を得ることが重要になります。最初の段階としておすすめなのはケージ内で、手渡しでフードを与えることです。「飼い主の手は危険なものではない」と認識してもらうことが大事なので、フードを受け取らなかったとしても強引に渡そうとするのは避けましょう。ポイントは名前を呼びながら、リチャードソンジリスの目線より低めの位置で与えることです。最初は驚くかもしれませんが、繰り返し与えていれば徐々に慣れてきます。
初めてのときは、手に驚いて噛まれることがあるかもしれません。リチャードソンジリスも手の正体がわからず怯えているだけなので、怒らず、時間を置いてからまた挑戦しましょう。フードの手渡しにも慣れてきたら、次の挑戦はフードを手渡す際に体の一部に指先でそっと触れることです。頭や背中あたりであれば比較的警戒されにくく、おすすめの撫でポイントといえます。背中を撫でることにも慣れてきたら、徐々に脇腹、おなかにも触れるようにしましょう。おなかに人の手が触れることに慣れなければ、抱き上げるのも難しくなってしまいます。
懐いてくれたらパートナーとしての生活がスタートです!
触れられている状況でリラックスしている状態になっているのが、先に進めても良いという目安です。お迎え当初から触れ合ったり抱っこしたりできるリチャードソンジリスも多くいますが、中にはいきなり抱っこをするのが難しい個体もいますので、まずはケージの床面に近い位置で手の平に乗せてみるのも良いでしょう。その際、もう一方の手をリチャードソンジリスの体に触れておきます。これが抱っこの基本です。徐々に高さを上げ、それにも慣れたとき、ケージからその状態で出します。急に逃げ出そうとしたときのことを考えて部屋のドアは閉め、ケージの側でやってみましょう。
抱き上げるときのポイントは「座った状態で行う」「暴れる様子が見えたらケージに戻す」です。抱っこさせてくれているときは優しく撫でたり、好物のおやつをあげたりしてリラックスできる状況を作ります。懐いてもらうためには、とにかくコミュニケーションの時間を多くとることが重要です。信頼関係を結んだリチャードソンジリスは仲間と認め、ときには毛づくろいをしてくれることもあります。人間はリチャードソンジリスのように毛で覆われているわけではないため、甘噛みされているような状態です。一度懐いた後はずっと仲良くしていけることが多いので、気長な気持ちを持ちながら積極的なコミュニケーションを取りましょう。
飼育方法や体調管理についてご説明していきました。気にかけてあげるポイントがいくつかありますが、ポイントを押さえていれば元気に過ごしてくれます。リチャードソンジリスは、慣れると人懐っこい生活でコミカルな動きも面白く家の中を明るい雰囲気にしてくれる魅力的な存在です。正しい生活環境でいつまでもあなたの良きパートナーとしていられることを願います。